吉野彰さんにノーベル化学賞授与!喜びの日本だが《将来はノーベル賞が取れなくなる》
2019/12/11

2019年のノーベル賞の授賞式が日本時間の11日午前0時半からスウェーデンのストックホルムで行われ、リチウムイオン電池の開発で化学賞に選ばれた吉野彰・旭化成名誉フェロー(71)に、カール16世グスタフ国王からメダルと賞状が授与されました。
授賞式では、化学賞の選考委員が吉野さんら化学賞に選ばれた3人について「化学において画期的な発見をし、リチウムイオン電池の発展をもたらした。人類のためになる真に偉大な業績だ」と称えました。

ストックホルム市内の中学校を訪れ、教室で生徒たちと記念撮影する吉野彰さん
日本人がノーベル賞を受賞したのは外国籍を取得した人を含めて28人目で、化学賞は2010年の根岸英一氏と鈴木章氏以来、9年ぶり8人目となりました。
産経新聞によると、吉野さんは京都大時代に考古学研究会に在籍し、発掘調査に熱中。実験や計算を重ねる化学とは一見すると畑違いの分野ですが、「この経験が研究開発で非常に役に立った」とし、世界的な研究を成し遂げた原動力の一端となったようです。
溝を掘って遺跡の有無をしらみつぶしに確認する考古学の発掘現場に研究開発との共通点を見いだしていたようで、「考古学の発掘手法は、研究開発と全く一緒。目新しいものはないと確認することは無駄ではなく重要なデータになる」と述べています。
技術のシーズ(種)と世間のニーズ(需要)
吉野さんが研究成功の条件として挙げるのが、「技術のシーズ(種)と世間のニーズ(需要)を結びつける」こと。技術に固執しても、世間の需要に合っていなければ見向きもされないというわけです。
自身については「剛と柔」の性質があると分析しており、「剛」は研究に対する執着心、「柔」は物事を楽観的にとらえる気持ちの余裕ということのようです。
一方、吉野さんは若い世代には、「35歳」という節目を意識するよう訴えます。ノーベル賞受賞者の多くが、30代中盤で賞につながる研究テーマに着手しているからで「今成果がなかったとしても、数十年後に世界が認めるようなことを始めることが大事。知恵がつき、権限ももらえて挑戦できる35歳までに得意分野を準備してほしい」としています。
ノーベル賞が取れなくなる日本
ノーベル賞をめぐってはこの時期、毎年のように、かの国の「ノーベル賞コンプレックス」に関するニュースが伝えられます。
それもそのはず、「日本人は28人」と「韓国人は1人」(韓国は2000年に金大中元大統領が平和賞を受賞したのみで、自然科学分野ではゼロ)という現状ですから。
しかし、近年、日本では当たり前のようになったノーベル賞ですが、今後はノーベル賞が取れなくなるというのです。にわかには信じられない話ですが、作家の山之口洋氏の書評の一部をお読みください。
「今年も、リチウムイオン電池の実用化による吉野彰氏の科学賞の受賞が決まった。同胞の栄誉をたたえるのは自然な心情だが、それを漠然と日本全体や将来に投影して、『日本人スゲー』とか『科学立国は前途洋々』と思うとしたら大間違い」
「それどころか、日本の理系研究規模は人も組織も衰退の一途をたどっており、このままではノーベル賞はおろか基礎研究を担う科学者自体もいなくなる…というのが著者の警告だ。そう言えば、受賞者自身の口からも同様の苦言を聞く機会が多くなった」
「『そんなばかな!』と反発を感じる人も、読み進めるうちに『科学技術白書』などの客観的データからあぶり出される恐るべき未来図から目を背けられなくなるだろう」
作家の山之口洋氏が取り上げたのが、気鋭のジャーナリスト岩本宣明氏の渾身の書き下ろし「科学者が消える: ノーベル賞が取れなくなる日本」です。
科学者が消える: ノーベル賞が取れなくなる日本
同書は日本の危機として、理工系博士の卵は半減/博士になっても職がない/大学院修了者の半数が借金苦/優秀な人材ほど企業へ/下がり続ける大学ランキング/日本だけ論文数が減っている/大学法人化後、研究時間が25%減少/基礎研究費割合は主要国下位―など様々なデータから、まさかの「結論」を導き出しています。
日本の将来に警鐘を鳴らす本を紹介しましたが、次代を担う日本の若い人たち、とくに小、中学生には夢をあきらめてもらいたくありませんよね。
大阪府吹田市出身の吉野さんは故郷の子供たちにこんなメッセージを寄せています。
「自分で将来の目標をしっかり決めてほしい。好奇心を持っていると、おそらく、未来が見えてきます。みなさん、目標と好奇心を持って頑張ってください」
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